花物語

朝陽の畔、疲れた一輪挿しの花が散ろうと悩み、光は霞む。
湖面の静けさには散らない涙を、小石が拾う。
樹影が歩き出すと、放物線をなぞった坂が遠くまで放られる。

鈍色の軋みが線路を撫で、始発電車が行方を持たずに出発すると、
じっと街を見守るカラスの瞳は、瑠璃色に輝く海のようで
峻険な岸壁が海を見失って彷徨う先を探し始める。

湖も海も、過去形を捨てて彷徨っている。
ただ一輪の花の疲れを巡り、小石のなかで冷たくなってゆく瀬の
微かに想い出すような古い流れ、深い森の木立、小鳥の鳴き声、
そして森を抜けた草原の地を翔る馬のたてがみ。

地平線の向こうから一輪の花の力が蘇るのを待ち、
それが隠された廃墟の拒絶をかいくぐり、
石碑に刻まれた謎の文字なら解読し、
それでも彷徨が止むことはなく、確かな原初のエナジーだけは感じ、
空に接続されないままの波が立ち始め。

足早に霧がたちこめようとするが、追いつけない時間を抱いて
老犬が静かに海を渡る、湖を渡る。
足跡を波に変えながら、一つの歴史、一瞬の坂に変えながら。
そのとき開く朝の物語、もう一輪、摘まれた花の物語。
語られない、知られることがない、それは分からない。
しかし紡がれるのだ一輪、一輪摘まれた花の物語は。
2014-11-08 00:00 : 試詩的終宴 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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