戻り来る夕陽の中で

斜陽で作られた階段の上のボール
遠い距離の中の自転車は土手に定置され
重力の見放した白紙の手紙に書かれた無数の言葉

視線は常に動きを奪われたまま
心は言葉に縛られたまま
私の足は白紙の手紙を踏み潰す

遠い過去と遠い未来
わずかな狭間に佇む私に
残されたインク涸れした一本のペン

煮えた太古の海に落ちた一滴のインク
星の欠片だけになった宇宙に落ちた一滴のインク
フィルムに映る恋人がキスを交わし、
永遠を誓う止まった時間

全てのインクを使い果たした
「愛している」とだけ書かれた紙片が
決して届かない君の眼になったまま
インクが空ろににじむ

風に拾われたボールが階段を滑り落ち
持主に見出された自転車は止め具を撥ねる

インクを吸わないペンを握ったまま
くゆらす煙を追いかけて
もう一度だけ戻った夕陽の中で
白紙の手紙を握り締めていた
2006-08-31 00:36 : 消去一葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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