それを、ひとつの距離と呼んだ

きみを降りつづける雪のひとひらも
私に降りかかることはない
たとえば暖炉が燃えていて、きみを暖めても、私は寒いままだ

冬の海峡を見たことがあったには違いないが
となりを見てもだれひとり、いなかったと想い出す
共有されないままの季節が今も過ぎている

折れ曲がる道の端に佇んでいた花を覚えている
きみが覚えていない、小さな花を
きみの足音を聞いた花を覚えていない
きみが覚えている、小さな花を

ひとつの虚構を見失ったままで私は、それでも
無数の屈折に散ったきみのひとかけらを見るのかもしれない
きみではない、きみを

帰り道を確かな足取りで歩んでいっただろう、
きみの背中を想い出そうとしているが
はっきりと想い出せる背中は私の背中だけだった

きみが去った、そのときに私は
きみより早く立ち去っただろうに
私は私の背中だけを想い出す

きみが去る、はるかな手前の私は
深く深く冬の眠りのなかで
ひとりきりの冷たい冬の夢を知るだろう

きみと分かち合うことを許されない
たったひとりきりの冬の深さを
きみは決して憐れんではならないし
私は決して、憐れみを与えられてはならなかった
2015-01-14 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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