沈黙からすら、と私は

林立する沈黙のなかを静かに歩いていたい。
だれとも、なにともすれ違うことなく、
そのとき私は独り、私と出遭うことがあるかもしれない。
踏む足元には累々たるデス・マスクが想い浮かぶ。
彼らの歴史もともに死んだまま地平を水平を形づくっているが、
それはけっして遠くはない、手を伸ばせば触れられるていどだ。
空はどうだろう?
私は、やはりあまりにも寒く、襟元も頼りなく
顔を上げることすら出来ないようだ。
圧しかかる低い雲が薄い虹色を見られないように
風より早く飛び去ってゆく、途切れなく。

生は役目を終えたのだ、あらゆる生は、同時に死も。
生も死もなく、しかし、そこには力がある。
あの、言いがたさの向こう、惑星の呪縛のような、
この青い地球のものではない、
それは、もはや存在の無さが産もうとする嘆きに似て、
死を熱望する生の蠢く衝動に似て、
あまりに冷酷で無邪気な赤子の泣き声、
しかし聴こえない、決して聴こえない泣き声。

ああ、そして私は、ついに私とさえ出遭いたくはない。
沈黙は沈黙の木を離れ
枯葉のようにすべてを覆い隠しながら積もってゆく
私は沈黙をかき分けて、そのなかに潜るだろう。
その沈黙のひとつとしてデス・マスクとは違うやり方で
あらゆる鮮やかさを内包して、しかし、
それらのすべてを絶対的に隠しながら
風より早く通り過ぎる雲だけで構成される
高さを奪われた雲、
私の瞳にだけ似た雲を見つめながら、
ついに私は安堵する。
永遠の私を永遠に一瞬間だけ繰り返し続け
なにひとつ変わることなく営々と流れる雲を見つめ
ついに私は安堵する、その予感を持つ。

限りない無為よ、虚無よ
私は、ここにいるではないか。
あの地平も水平も息絶えた、ここに。
デス・マスクたちにさえ触れさせない、
この厚い沈黙の深いなかから
強い眠気を漂わせて
眠気を漂わせる雲の流れを見つめ
ここにいる私を絶対的に訪れよ、
忘却の遥か以前を絶対として訪れよ。
沈黙を、すべての沈黙を完全なものにするために。
私は、もう、沈黙すら知りたくはない。
2015-01-22 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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