冬の少年の冬

その石が見えるのかと冬の梢が問うだろう朝には眩しい一輪の花が必要だった。
ブロック塀だけが作る道を人工的に歩いてゆく人波には影がない。営々と続く先を知る必要があるにしても影がない。幼い斧をかかげたカマキリを掌に乗せて動かない少年のように影がない。
いくつかの廃駅を経由したら星屑にもなるような砂を拾い集めれば笑うだろう少年も今は冷たい。
まるで季節から零れ落ちたかのように小さく静かな池を巡って枯葉が舞うように蝶を追うと失われる水平線を横切る冷気みたいだと彼は呟くだろう。そのとき一人の女性が彼に寄りそいながら昼の空に星を数えるのは確かなこととして知られているだろう。
異国かと想える壮麗な堂内を隈なく覆う視線には数がない。きっと無数を数とは呼ばないのならばなどと書きかけて無数ですらないことに気づくかのように数がない。
その視線が少年の肢体を愛でながら堂内に運び込むのを拒絶する。その石が見えるのかと冬の梢が問うだろう朝には拒絶しなくてはならなかった。眩しい一輪の花も影もなくとも拒絶はあるのだと示さなくてはならなかった。ブロック塀に寄りかかりながら呟く彼と一人の女性のためにも拒絶は示されなくてはならなかった。
そして複数の狂気を輪舞のように繋げながらでも示される拒絶の前で冬の梢は問うことを諦めるだろう。それでも眩しい一輪の花が必要だったが。その頃には少年のことを覚えてはいない。だれも彼もが人工的に歩いてゆくばかりで知らない先を目指している。少年は一人だけ覚えられることなく遊びすら知らないままに残される。
2015-01-24 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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