老婆の手は握られる

終らないページをめくろうとして次の駅を目指しているが、
前の駅を通りすぎてしまってからでは到着できない
「だから」と言ったのにというような無言を投げかけてくる男の顔は
幾枚もの新聞紙のなかに埋もれている
だれもがしわくちゃに丸められた新聞紙のなかに顔をうずめ
そうして過ぎる駅、過ぎない駅、過ぎようとする駅を見ないのだ
車窓を眺めているのは呆けたアホウばかりだった
山の頂きはどれも変わることがないし
降り、そして止みながら窓を叩く雨さえ変わることがない
雪さえ降ったろうが窓の決まった筋通りにとけ消えるし
北国も南国も同じだったし、あのスコールだって同じにしか過ぎれなかった
駅員は腰を痛めたまま切符を確認し続けていたし
切符を持っていない連中が隠れる場所も変わりはしないし
切符を持っている連中の無表情がくずれるわけでもない
<男とページの間隔は…>
そう書かれた一枚きりのノートを開いたまま
レールの継ぎ目の絶え間ない繰り返しに涙する一人の老婆が
手を握りしめていた、固く、二度と解かれまいと見えるほどに
それは固く、握りしめていた
2015-01-29 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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