死んだままの殺人者

一本というより一人というべき殺人者である枯れた木
そのそばを人は、風のように通り過ぎることができない
死んだ、死ぬよりも先に命を知らない風のようには
命に縛られて命は窒息しながら生き長らえようとするのか
まるで寄生木に宿る寄生木のように
我が身を喰らう伝説の生き物のように

さても彼(彼女)はなにもしてはいないのだ
ただ伸びるままに乾いた一本の枝が激しい雷に折れ
そこに石に蹴つまづいた子供が倒れ込み
目から脳髄を貫かれたまま抜くこともされずに放置され
ただ灼熱の陽に焼かれるままであるばかりで
ただの枯木に過ぎないのだ

かなり遠く、望む街もないではないが
ここに到る酔狂人は、もはや望めず
むしろ、その一人の子供が何故、ここに到り
その枯木に駆け寄ったのか
そのことの方が不思議なのであって
しかしだれにも知られることのない不思議だった

子供の両親、親族、友人、知人の落胆は激しく
もはや打ち切られた捜索は懸命なものであって
警察の捜査も慎重かつ万全なものではあった
それらすべては、やはり無機な風がときおり
吹くような吹かないような不気味さに消えてはいったが

空からの枯木は、こんもりとした森に隠れ
そこにひとつの死体があることなど分かりはしない
森の生き物たちのいくつかは餌の増えたことを喜んだようだが
それは、あまりに擬人化し過ぎであろう
ただ腐乱するままに折々、食うべきものが食いに訪れたのだ

ついに枯木が倒れ、骨ばかりが残るまでは数年でしかなく
しかし骨ばかりは数万の時を超えるに至ることになるだろう
美しい骨ばかりが不自然な組み方で、しかし
見出されることもなく枯木を抱き再び風に吹かれることがあるのか
森の寿命さえ数万の時は超えないであろう
そして殺人者は、変わらず憂鬱に死んだままである
雨にも乾いたまま、死んだままであることを変えないままである
2015-02-05 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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