…きっと、ひとりの恋人

恋人のとなりなら一つの白いカップが置いてあり
コーヒーのように注がれる時間を感じている

一羽の鳥が陽の束を、さらに重ね持とうとするガラス向こうでなら
帰れない巣を想い出して、もう一人の恋人がたむろする街路を抜けると
田園であればと願い、似た色彩を不規則に重ねただけの
暖かそうな屋根たちに出遭ってしまう

足りない、足りない、季節が足りない-

そう、つぶやく花の傍に、そっと膝を抱えて座る夕暮、
その夕暮を遡る遡及力の強さにさえ負けてしまう記憶のなか
明確な輪郭を崩せない波をひとつひとつ崩しながら
ある午後(午後たち、だった)が壊れてゆくのを願っている

あの泡のように、依存しない時間のなかのコーヒーが飲まれると
かたく独立を守る湯気が一筋の頑固さとともに天井を目指してから、
恋人の恋人が恋人であるように絶対の依存を求める時間、
依存しない時間だけでコーヒーは消えてゆく

知らなかったバスの発車音が想い出されるならば、どうしても哀しい、
そう言ってしまうだろう小銭の音がレジに吸い込まれ
足りなかった季節のなかには、恋人なら消えてゆくから、
だから想い出さない、そのためにすべてを足りない季節に閉じ込めて、
想い出さない、足りない季節のなかだけで春が消える冬を待つ
2015-02-10 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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