朝のカフェ

煙草の煙が立ち上る向こうには一面の曇天が広がっていて、むしろ紫煙よりも汚れた雲が季節を汚しているかのようだった。もし、これが夜だったら月だって汚されていたろうに、残念なことに夜ではなかった。昼にまでは達することのない朝だった。
ときに想い出をなげかける面影を冷たく破り捨てるように、新聞紙の端が破れて今日のニュースはすべて終わりだった。バスの発車音が平和な銃器の音に似てけたたましい。あの混雑のなかに、どれだけの発見があるのだろう。生きることのすべてがあるといわんばかりの混雑のなかに。嘆かわしい努力で彼女なら(そんなものはなしでも)見つけるのだろう、毒物にきらめく貝殻の美しさのように、溢れんばかりの美しさを。
天が動くより早く動く地上では、目ざとさが重要だ。「ああ、分かっているさ」路傍で眠るみんながいっせいに呟いている。だれもがだれも、それを口にしながら立ったまま路傍で眠り、路傍で眠りながら混雑をすり抜けてゆく。
汚れた雲は煙草の煙の消えるよりも早く少しの明るさに空を明け渡し、遠い季節を予感させ始めている。「なんという絶望なんだろう、美しすぎるね」彼女は呟いて残りのコーヒーを捨て、テーブルに突っ伏して眠り始めていた。
2015-02-18 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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