鳥に

ほんの一瞬間もあれば、どこにでも行ける。つまらないことばかりで泣きそうな日でも忘れたように。むしろ、どこにでも行けなくてはならない。とどまり、ためらい、何もできないままでいるのが、それでも良い。どこにでも行けるまま、とどまり続けるのだ、同じことだと乾いた無表情にものを言わせて。どこかに移動するのは、その、はるか先のことで良い。
戻る海が遠ざかってゆく、少しだけ哀しい季節を通りすぎて、鎧戸のむこうの気配は静かに、晴れているか、雨が降っているか、あるいは曇りか、雪か、、、遠すぎる一瞬間のための時間は永遠に近いが、しかし一瞬間で永遠に遠ざかる。それも、また良い。

あわただしく憎々しいだけの日常が、ただ続いてゆく、遠くまで。そして想い出す星の幻影。色を失い星という仮象のなかに閉じこもってゆくひとつの星、その幻影。恋人の声は近く、そして別れたままで、懐かしさが乾いた響き、割れる響きのなかに繰り返す反響を送り込み始める。
一人きりだ、たった一人きりなのだ、と繰り返すだろういくつかの日、哀しみを探しながら滂沱と流れる涙に目覚め、恋人の手の温もりが蘇る日、誰も傍にはいられないのだと知りつつも求めてしまう日、、、

ああ、、、貝には なりたくない、貝にだけは!

むしろ抜けてばかりの羽根の痕を見返ることもなく飛べないまま羽ばたき続ける血塗れの鳥だ。
バランスを崩しては哀れにも頭から地面に突っ込み、それでも羽ばたき続ける鳥だ。完全に飛べないことを分かりながらも羽ばたきをやめることができないとき、それでも羽ばたく鳥のひとふりで世界が鈍く、哀しみを投げつけられる。彼が拒否できない絶望を、鳥は引き受けもせずに羽ばたき続ける、飛ぶことができないまま、飛べないことも知らずに、飛べないことも忘れて、飛ぶことも忘れて-
2015-02-27 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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