それでも

競り上がる海には水平線がない
ぐるり首を巡らすと、突然、
地平線のない大地が競り上がる

そうして海風に吹かれながら波に立ち
底深く沈んだゆらめく大地を見上げ
星も太陽も月も見えないことに気付き

汗ばんだ掌を開き眺めると、
小さな太陽と、小さな蒼い惑星と、月と星と
それらが掌の向こうでにぎわっていて

もう一方の手には、両面に小さな字が
ギッシリと書き込まれた手紙が、
それを手紙というのなら、なのだけれど、
握っている手から次から次へとはみ出し

継ぎ接ぎだらけの遠目には白とも黒とも言える、
しかし灰色ではない壁となって
風がやみ、息が止まり、心臓の音だけが
いやに大きく響いていた

昔見た銀河形をした真っ赤な心臓が
ゆっくりグルグルと周る音が響いていた
不協和したままの膨張音は希薄になり

見知らぬ隣人が向こうを見つめたまま
黙って暖かい手で私の手を握りしめた、その中で
私の手は血管が浮き出て脈打ち始めた

見知らぬ隣人の脈拍が、
指先に軽い痺れをもたらし続けていた
2006-09-03 17:49 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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