雲の上にある日

冬は赤い靴を想い出す、それを踏み潰す醜い女どもも。
それがピン・ヒールなら蹴り折るのが都会の習わしだった。
今では、そういう風習は消え去ったらしいと聞くが-

吐き気だけで生きている午後、
雲向こうで飛翔するジェット機の音には哀しみを引き渡したい。
墜落現場に人がいたとしたら、それは不運なのか。

(ただ一つきりに近いほどの体験でさえ、それは不運なのか)
そんなことを考えながら腰を撫でて農夫が農婦を見やる。
農婦からは遠い山を越えるような声しか戻ってこない。

「山の反響がさぁ- 畑に吸い込まれるよねぇ- 」

山に幾筋も反響する光を背景に農婦も少し立って腰を撫でる。

都会では何本ものピン・ヒールが折られ始める。
ゴリラに似た肢体で美しい女どもが歩くことも出来ずに座り込む。
地下鉄の列車の轟音が髪を切り裂き、
「ヤマンバだぁ」と子供たちの嬌声が響きを重ねてゆく。

ジェット機が囁くように墜落しながらつぶやいている。
「山の反響がさぁ- 」
少し雲が濃淡を変えただけで一日が終わる、平和だった。
2015-03-07 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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