前に進むはずの後姿

彼方に一つ佇む椅子に置いた手紙は
いつまでも私の手から離れず
それはまるで駅のない汽車が
いつまでも走りながら
いつまでも同じところにいるようで

もう読むことすらない本が埃に埋もれ
向かい合わせのページの文字が重なるときにこそ
その本に初めて出会うことが出来るという、
あの意図せざる奇蹟の出会いというもので

微笑の温もりだけを残したベンチは
枯葉が積もった小山に埋もれ
私はベンチの下で息も出来ずに潜むだろう

明日の新聞だけを常に抱えて
昨日のことばかりを調べながら
今日という日を笑うことも泣くこともなく
全ての時間から取り残されて

遠くで踏み鳴り響いた地雷に足を置き忘れ
極地の氷に差し込んだままの手を海が取り戻すとき
シングルのジンに漬け込んだ心臓が
アルコールを巡らして酔いをさますように
きっとリモコンで動くロボット

蒼空からの贈物を受け取れない大地に立って
拒否出来ない私の代わりの私を祈り
明日、微笑むはずの君とすれ違いに歩いていこう

海から絶望的に遠い海が
それでも海の抱擁を忘れていないというように
未来に背を向けながら歩いていこう
2006-09-03 22:33 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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