じーちゃんの右側

じーちゃんと並んで畑を見てたとき、農家になりたいことを告げた。
「お前にはできん」「体なら鍛えてるぞ!」「農家は儲からん」
じーちゃんの左顔は嬉しそうだったが畑が悲しく見えた。

みんなが前を向いてるとき、後ろを向いた
みんなが後ろを向いてるとき、前を向いた
みんなが空を仰いでるとき、地に目を伏せていた
みんなが地に目を伏せているとき、空を仰いでた

じーちゃんは、みんなが向く方のことも知ってた
みんなが向かない方にはややこしいことしかないことも
「それしか、できないからね」
そんな風に言うのかな、生きてたら

じーちゃんは寺男、親もはっきりとは分からない。
大きな地震に大きな戦争、色々とあった。
「カエルが鳴いてるぞ、聴こえるか?」
じーちゃんは寝つけない夏の夜、カエルの鳴き声を聴かせてくれた。
田んぼの真ん中にある家で、はじめてカエルの鳴き声を聴いた。

じーちゃんは左の耳が聴こえなかった。
じーちゃんは海軍の砲撃手だったから。
じーちゃんは、いつも、

色んな、じーちゃん、じーちゃん、じーちゃん
もう、じーちゃんと話すことはできないのかな

カエルの鳴き声を聴き分けるよ
畑も少しは耕すよ
みんなと反対の方を向くようにするよ
じーちゃんほど、うまくはいかないけど

娘がね、親父のことを「ずぃーちゃん」って呼ぶんだぜ
親父まで、すっかり、じーちゃんになっちまってね、おっかしぃんだぜ
それにさ、今は「祖父は…」って言ってるんだ、じーちゃんのこと

じーちゃん、言ったことあったかなぁ?

じーちゃんのこと、大好きなんだよ、おれ

じーちゃん、聴いたことあったっけか?
2015-03-12 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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