もう土に、還ることができない

もう今では煙も立ち上らない煙草を咥えながら、
ただ過ぎゆき終わろうとする冬を見送っている木には新芽の気配がない。
広がるだけは広がっている枝々の向こう側では
緩いカーブが哀しみに寄りそっていて、その先には
君が想い出している海が広がるのだけれど、あまりにも小さい。
懸崖に散るのは波飛沫より深くから蘇る涙であって欲しい、
そう想いながら散りゆく流星を見つめる瞳を探している。
するりするり、と、それはすり抜けてゆかなくては、
そうあらねば哀し過ぎるので、するりするり、と私は告げる。
捕まえたままの透明な甲虫を掌に、
開いたままの手の平から飛び立とうとしない、
その透明な甲虫を君は冷たさから救おうとしているが、
あまりに遠過ぎて私には分からない。
ただ「分からない」としか言えないことが哀しくて、
その哀しみに耽溺し、溺れてしまいたいのに溺れられず、
一艘の哀しみを糧に虚無の涯にまで行き着きたいのに、
水平線は、いつまでも水平線のままだった。
あの木が咥えていた煙草を一本、譲り受け、
どこまでも立ち上ってゆくだろう煙を一塊、吐き出した。
哀しみは、どこまで行っても哀しみのままだった、
ついに飽いた甲虫なら、透明さを喪って土に還っていった。
2015-03-17 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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