そこに一匹の犬がいた

どうして、あなたが私の近くに遠ざかるのか、
もちろん私が、あなたを追いかけているからで
追いかけるほど近くに遠ざかる、
そういうことであることを少しづつは学びながら
遠ざかり続けるあなたに近づいてゆく

かなしみについて語るべきことは語り尽くしたはずで
愛については語るべきことを見つけ出さなくてはならない
そうでなければ私たちにはなれない
近くに遠ざかることを正しくかなしむことができない

石畳を斜めに踏み横切ってゆく影を見る
見あげれば無数の段となる平面をのぼり、
それだけで、すべての体力を使い果たしてしまう
のぼりきった先に散りながら雨に濡れて
ドッグ・フードは猫が先に貪っている

いつでもおいで
と手招きする自動現象を天空の自然現象に重ねて
科学の言葉で語ろうとしたが
私は科学の言葉を持っていないことに気づく
いつでもおいで
繰り返される手招きなら呆然と見送ろう

かくも深く愛しているために
遠ざかることしか知らない距離を探している
夜は距離を縮めるかなくしてしまうので
夜を起きて過ごしてはいけない
いつも昼の時間帯しか投影しない夢のなかにいるべきだった
眠り損ねて想い出すのは海に近い記憶ばかり
貝殻のなかで光る星さえ見つけるだろう

ブラインドをプレスした機械が故障したと聞き
あまりの関係のなさに驚きながらブラインドを開閉すると
カーテン・レールのかなしみをあなたの夢に与えた
もう少しで夜が終わるだろう、
朝も終わるだろう、昼も終わるだろう
一日が終わらないうちにすべてが終わるだろう
冷たいブラインドを抱いて一日が泣いているので
カーテンに隠れたあなたを探し
無数の古地図を広げたままで私に眠りを与える

初出:note.mu(20150531)
2015-06-04 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

For Admin

落書内検索

一言お報せ

リンクは勝手に頂戴、削除してます
ご迷惑な場合は、ご一報下さい



メール・チェックは非常に稀です


BlogPeople

出現するかもエリア-転記候補