動かない、しかし動いている、しかし動かないでいた

遠くばかりを横切る多分、車を追うように視線を移す
移すといっても移動する、移動するといっても動きはしない
緩慢さのなかの緩慢さだけで風が吹こうとしているが
愛を謳う場所に留まろうと渦を巻いているばかりだ
季節を越えようとする陽光は、いつでも眩しい
ただ幻惑するだけで通りすぎる冷たい令嬢のように眩しい
もう前の季節、その前の季節と追いながら秋を越えて冬を越えた
春と夏を想い出すのは難しい
秋ならば少しは想い出せる気にさせてくれる
それでも秋を覚えていないので冬について語ろう
しかし雪を覚えていないので冬を語りにくい
ようやく想いだしてきた秋の落ち葉のようには冬を語れない
きみの唇の感触だけが冬という記憶に重なるばかりで
それを冬と呼んでおこう
「その車は、まだあるの?」
もし訊く人がいたならば、こう答えねばならない
「その車を消すために見たのだよ」
横切られていたのは、やはり水平線ではなかった
ただ、どこか乾いた遠く、
光を拒絶したまま光る遠くのことのように覚えている

note.mu(20150606)
2015-06-17 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

For Admin

落書内検索

月毎落書

一言お報せ

リンクは勝手に頂戴、削除してます
ご迷惑な場合は、ご一報下さい



メール・チェックは非常に稀です


BlogPeople

出現するかもエリア-転記候補