上りの下り階段

一層に強いビル風が吹き抜け新聞が舞い、スカートが舞った
ただでさえ、むつかしいのを大層にしかめた顔を見ると、
目にゴミが入り込んで想わず目を閉じてしまった

顔を覆っていた手を外すと緑なびく絨毯と、
色とりどりの花が地の果てまで青空に続いていた
長い年月、誰も通ったことがないような道がただ一本
固く、固く踏みしめられて辛うじて残っている

背後を見ても真っ直ぐで、前を向いても真っ直ぐで
何度も見直しているうちに、どちらが前か分からなくなってしまった
太陽は何故か柔らかな日差しのままに私の真上に遠く光っている
その傍を形を留めない雲が消えては現われ

仕方なく一方に歩き出した
延々と一人、歩き続けた

途中に美しい、小さな泉があり
その先に上り階段が見えてきた
泉で一口、水をすすり、階段に足をかけると、
意外と大きな段差に労が要った

幅広い階段を一足、一足、ふうふう言いながら上ると汗が噴き出した
ところで、辺りを見渡すと、風景が遠く胸の辺りの高さで広がっていた
さらに見渡しながら一足、上ると、グイと景色が上った
グイ、グイ、グイ
と、一足ごとに景色が上り、やがて階段が天つく高さに
ポツリ
と光るだけの真暗闇に薄ボンヤリと光っていた

下ろうか・・・と想ったが、あろうことか下り段がない
仕方なく階段を上るとポツリがポチリと変わった
これでは上る意味もあるまいと想われたが、
薄ボンヤリした階段が、ただただ水平に伸びている横様を見て
これはどうしたものか?
と一考したのだが、良案も浮かばない

疲れてきた足を階段に、もう一足、かけたとき
ウッカリと踏み損ねて滑ってしまった

と、いやに目が痛くて涙が後から後から出てきて仕方なかった
もう彼女の姿は背中しか見えなくて、
もう一度、弱いビル風が私の顔を温く撫でていった
彼女はもう、階段の上り口にまで達していた

歩道と車道の区切り線が、少し薄くなった気がした
2006-09-06 23:48 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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