夏、愛と生命について

夏に降る雪の行方を訊ねたい、ただそれだけで夏を終える雨が降る。

雨の風をきみが指先まで大きく広げた手のひらで冷たがりながら魚のように飛び跳ねる。穏やかに崖に到達してクルリと跳ね返る波のように飛び跳ねる。
いくつかの季節をスルスルとすり抜けてゆくように、きみが歩く構内の歩道、いくつもの世界を構築しながら破壊してゆくように、きみが渡る構内の歩道橋、きみの支配を噴水は受け止めたか。

噴水の周囲を巡る夜の虹のなかでだけ、きみは告白をするのだとノートに書いていた。曇天を写す透明な人工池に仰向けに浮かんだノートに。残酷な管理人は古びた熊手を面倒臭げにノートに放り投げ、しかし引っ掛けることさえできず、ノートは沈んでゆく。

ざぶざぶざぶ…
管理人がノートを取り上げて排水口の方角を見つめてため息を吐く、指でつまんだまま。

さぶさぶさぶ…
重たげな音ひとつでゴミ箱に収まるきみのノートは別のページを開こうとして開けない。

夏を大きく仰ぎながら雨が降る。
きみの探した夏の雪が遠くを降りながら私たちから距離を奪ってゆく。

深海には季節のない雪が降り続けている。

(生命、という言葉が意味をなさない場所を探さなくてはならない。
 雪の降るところには生命が宿るから)

きみの雪が夏に降る、夏に降る雪のなかで私が眠る、
私たちの薄い夏が膜となって私たちは私たちとして愛し合える。

私たちの愛は季節でできている、
私たちの愛には生命が宿らない。

初出:BlogSpot(夏、愛と生命について)
2015-07-16 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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