夏の冬を、きっともう想い出せない

どこまでも夏景色しか見えないので
冬だと想っている歩幅で少し歩いていただろう。
歪んだ季節だけを通り過ぎる風に吹かれた帆が孕むと、
出航する名のない花の傍らにならば、きみに似たかなしみが微睡ろんでいる。

私たちが通り過ぎた横を見ていない、つまり視界は、常に私たちを裏切るばかりだった。
月を砕くように静かな波が夜の水平線を形作り、私たちの間に横たわる。
冷たさを求めていただろうか、求めていただろう、それしかなかったのだろう。
たしかに私たちは裏切りのことば、偽りのことば、あらゆる手段を通じて、
その冷たさを回避しようと努めてきたことに疑いを持ってはいない。

しかし、こうして横たわる夜の水平線を前にすれば、
やはり冷たさを、そこに与えねばならない、そんな気だけで終わらせてしまう。
そして、それだけできっとよいのだと想ってしまう。
ああ、だから夏は来ない、冬道を歩けば冬景色しか見えず、
やはり冬だとしか想わないし疑わない。
その安逸をよしとするでもなく疑わない。

しかし遠くを見れば彼女は夏を生きている。
私たちには決して訪れない夏だけを彼女は歩き、彼女は生きている。
だから冬を捨てねばならない、そうはいわない。
冬はもう、忘れられた季節なのだから。
いくつかのことばを並べさえすれば、私たちは冬を忘れられる。
いくつかの砂粒を並べるように、そこに並べさえすれば、
どんな季節も、どこにでも遺棄されたまま大人しく息絶える。
夏景色の青い空のした、降る雪を積もらせて、きみはいう。
夏のすばらしさを、きみがいう。
2015-07-24 00:00 : カイエ、詩 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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