愛を棄てる場所について、あるいは時について

いつもよりも早い季節、古い恋人と夢中で再会した。
二人で汽車に乗りいずことも知れぬ田舎、畑道を延々と歩いた。道すがら、恋人が「○○おばさんに…」と言い、なにか手持ちものを置く気配を見せた。
汽車に乗る前、乗ってから、降車してからの散歩、ずっと伝えたかった一言を告げる前に夢から目覚める。隣の布団では女房がスヤスヤと寝息をたてていて、「ありがとう」と呟いた。
古い恋人に、ずっと伝えたかった一言について少し想い馳せる。女房と古い恋人は二人で一人だったし、一人で二人だった。
「それでも、ほんとうに愛していたんだよ」
ああ、その一言を伝えたかったのか、女房に、古い恋人に、あらゆる恋人に、世界中に。なんと呆気ない一言なのだろう。
二度目の眠りのなかにはだれも現れはしなかった。揺れる風を追う季節のなかで煙草をふかす朝が訪れる。
いつも季節は早過ぎる、早過ぎる季節を追って私は愛を棄てる場所を追い求め続けている。
(#)

(初出:2015/10/28 From note)
2016-01-25 00:00 : Zero Areas Ⅰ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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