多分、「どうして」と問いたいだけなのだけれど

誰もいない街に立った雨粒は路面に凍り
無重力に吹かれて震えているが 僕の掌で消えていく
そうして私の中で蒼茫を見つめて再び立ち上がり
僕を置いて消えていく中の私は遠い

遠い季節の訪れはスベリ台が教えてくれる
ブランコが教えてくれる きっと
その季節(の中)に君は涙し 僕との距離を測るけれど
だから私は行先を失ってココに留まることが出来ない
ヒューと口笛を吹き鳴らすのは、そんな時に違いない

もう一度ヒューと風が吹いたなら
その時は僕は君に、この本を読み聞かせよう
閉じられた君の瞳が見つめる世界を
私のいない、その世界を一緒に過ごすために
外国船の汽笛が鳴響く港で

私達の知らない国から訪れた外国船の汽笛がなく港で
僕の声は響くだろう
汽笛に負けず、低く低く遠くまで
君を素通りして二人だけの場所で響くだろう

忘れてはならないのは、きっと僕達だけの話ではないことだ
それだけは、私が忘れられても忘れてはいけないのだと聞いた

多分、それは昔のことだと想うけれど
きっと僕は黙って聞いたはずだ
覚えていないけれど聞いたはずだ

だから僕は君を忘れて消波ブロックに散る波を一心に見つめ
それは波音が聞えないほど一心に見つめて
僕は海を失った
失った海がどうなったかなんて知りやしない
カモメのいない海が海でないように
失った海のことなんて知りやしないんだ、僕は

「僕」は多分で出来ているから

ああ、でも遠くに響いていた海鳴りの記憶は消えてはいない
私の愛した記憶が失っていない(たった一つの)
それがいつだったかを知りたくて涙が流れるというのに
海鳴りよりも大切なことなのに
ああ、僕は覚えていない
いつのことだったのか、僕は覚えていないんだ

そんな僕の涙を君は笑うだらうか
みんなは笑うのだろうか
それは嫌だ
それじゃあ涙が哀れすぎる
それなら私はその涙、舐め尽そうと想う
だって汽笛が響いているもの
一隻だけ入江に浮かんだ外国船の汽笛が響いているもの
ポツンと一つだけ浮かんでいる外国船の汽笛が

ボォーッ ボォーッ ボォーッ

と響いているもの
2006-09-18 15:00 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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