川の流れに

流れを止めたままの川の浅瀬に行き所を失った枯葉が浮かび、崩れられずに人跡を失った橋を渡った低い禿山からの眺望は。
少し遠目に見える暗窟に入り込めば視界は開けるだろうという夢と、渡れない桟橋を揺らしながら君は歌う。
僕と君は常に背中合わせに互いの体温を調和させ、星を見上げながら一人きりで。向こうから響く君の歌声は背骨の振動を伴わず、触れ合っている背中だけが自動調整した温度の中に閉じこもっているはずの君と僕は常に全解放の中で互いを、つまり自分を見失ったまま。

僕の痛みを君に伝えたいと願うだろうか。僕の哀しみを君に伝えたいと願うだろうか。僕の問いを君に伝えたいと願うだろうか。全ては何処に向けられているのだろうか。僕は何に向かっているのだろうか。

君は、それでも僕と背中合わせ。
すべての君は、それでも僕と背中合わせ。

遠い昔、君が語ったであろう話を、僕は覚えている。
確か、孤独という概念を僕達は共有出来るだろうか、ということから始まる物語だったと想う。
そう、孤独という物語と物語という孤独と。
決して語りえない物語を、いかに語るかという夢物語を語るということについて、ずいぶんと長く聞いた記憶がある。<それ>が、私達の全てではなかろうか、という君の強い信仰であることも。
結局、私達は<それ>を巡って近付くことが出来ず、やがて君は永い沈黙と微かな吐息という頑なさに包まれて動けなくなり僕に背凭れた。
だから僕は、今でも呟き続けている。その呟きが、たれに語るでもない、私達の物語である。

凍ることが出来ない冷たさを知っている川を渡ろう。
足先の僅かな血液が馴染んだ温度が体を巡り、やがて、きっと僕は川となる。
君の瞳に映るだろう<それ>から始まる全てと終わる全てと。

僕達は流れる川を知らない。
僕達は、流れる川を見たことが、ない。
2006-10-23 14:13 : 落陽 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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