交換ノート(初出:2012年03月26日)

幾億もの言葉で埋め尽くされた真っ白なノートをめくり、夜のしじまに身が融けて行く。
ノートが真っ白だと言うことは、きっと、そういうことだ。
語り尽くそうとしたはずの言葉達は、やはり空に消えて行くし、私たちの言葉はすれ違い続ける。
そうして一つ一つの言葉は積み重なることもなく、ただ厚みだけが増して行く。
その厚みに、私達は呆然と立ち尽くしている・・・そういう事だろう。
結局、皆、語り合いたい事は語り合えず、語らなくても良いことを語り続け、そして何も残らなかった事実だけに気付く。
笑い、泣き、怒りしながら、
「ああ、そうか。ああ、そうだったのか。」
と納得するでもなく納得し、今日を終えて明日を迎える。
その日々の積み重なりが哀しみとなり、私達を一つの場所へと導くに違いない。
遠い過去にあったという「約束の地」も、そうして創られたたのだろう。
しかし人は哀しみを忘れ、やはりまた、すれ違う言葉に想いを託す。
それは決して、悪いことじゃあ、ないのだ。
そのすれ違いがあるからこそ、私達は語ろうとするのだし、真っ白なノートはさらに透き通り、硝子のように透けるほどに。
そのノートの向こうには、温かな陽も煌くし、人々の笑い声さえ響くのだ。
一人一人が誰に見せることもない、誰に見せることも出来ないノートを手に、人々の間を行き交い、戸惑いして。
大切な事はノートを交換することだ。
一人に一冊、ノートが必要だから、私達はノートを交換することが必要なのだ。
何も書き綴られていない真っ白なノートを交換して、お互いに恥ずかしげに渡し合う。
そんな日々が、私達には必要なのだ。
2012-04-19 13:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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