貴方の好きな風の物語

貴方が、好きだのに忘れてしまったと言っていた風の物語を
私は別れて以来、随分と経ってから噂には聞いたけれど
どうしても探しに行く気になれず、今日も風の音に怯えていた

私の聞いた酷く不確かな粗筋は
街を見下ろすビルの屋上に住む猫から聞いたもので
そんなことも知らぬのかと言わんばかりに
かいつまんで面倒臭そうに話していたものだった

結局のところ、風の物語を知っている連中は皆、そうで
そもそもに知らない私が愚かに過ぎるのだろうが
何を自慢したいのか、常に尊大な姿勢を崩そうとはしないし
何も要らんと言いながら、そんなものかと呟いては
結局のところ、あまり大したことは知りやしなくて
肝心なことは何一つ分かりやしない

それなら、こうして風の音の怯えながらも
その中に混じって、時折、聞こえる一音一音を拾えば
それは言葉にも、音楽にも、何にもなりはしないのだけれど
私が風の音を聞き続ける助けには十分になるし
時折は風の優しい笑い声すら聞こえてくる

そうやって私は別れて以来
風の音に怯え続け、風の音に耳を傾け続け
終には拾い集めた一音一音を繋ぐ一音にもなったが
あの時と同じように安らかに眠る貴方の傍を
最後だからと、そっと静かに吹き抜けようと想う
2012-08-02 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

For Admin

落書内検索

月毎落書

一言お報せ

リンクは勝手に頂戴、削除してます
ご迷惑な場合は、ご一報下さい



メール・チェックは非常に稀です


BlogPeople

出現するかもエリア-転記候補