空に手紙が描かれると星が散る

数え切れぬ程の日々を尽くして書いた紙切れは
風とも感じられぬ風にすら居場所を失い
二度と想い出すことすら許されぬままに消えたが
あまりに当たり前の虚しさに振り返ることすら出来ず
新しい紙切れをポケットに詰め込んで歩き始めた

そうして常に失われ続ける紙切れを手紙と呼び
手紙を届けるべき人を失った恋は終わることがなく
失った恋を互いに探し求めることを愛として
語ることを失った愛は夜空に物語として託され
星と星との間に生れる闇の中で、ひっそりと
静かに語られることを待っている

始まりの夜空に月はなく、ただ光にだけ満ち
光と光との間に星々が生れ、星と星との間に闇が生れ
闇と闇との間に物語が産声を上げた時に
遥かな水平線よりも更に薄い三日月が生れようとし
太陽が眠りから覚めて物語を拒否したけれど
空に君臨し続けることは出来なかった

物語に押し潰された闇に、更に引き裂かれた星と星とは
誰にも聞かれることのないように、ひっそりと物語を闇間に隠し
あの薄い月が徐々に厚みを増して終には宙を模り
物語と物語の間を渡り歩く時を待ちながら
ただ静かな夜空で、互いが光速で離れゆくままに任せつつ
絶対的な別れには哀しみがないことを闇に隠し続けていた

やがてまるで無関係な想いを託された満月は
東の水平線を境に、もう一つを穏やかに揺蕩う海面に浮かべつつ
闇間に隠されただろう物語の欠片を拾い集めながら
繋がることのない言葉を紙片に書き留め続けては
誰に手渡すでもない詮無い手紙に変えては
静まり返った街という全ての街の上に月明りとして注ぎ
その様を見届けた星という星の全ては
少しだけの満足と共に安堵して、直ぐに訪れる暁に眠るのだった
2012-08-07 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

For Admin

落書内検索

月毎落書

一言お報せ

リンクは勝手に頂戴、削除してます
ご迷惑な場合は、ご一報下さい



メール・チェックは非常に稀です


BlogPeople

出現するかもエリア-転記候補