背景を捨てた犬を見つけたら

背景を捨てて歩く犬は呼ばれることなく
見られることのない虚空の中で
生きることを喪失したままの命を生き

背景も色もない景色の中で独り
決して進むことは出来ないというのに
決して歩みを止めることも出来ない

乾いた涙も乾かないままの涙も等しいように
犬の瞳は白濁することすら許されず
涙の色を想い浮かべることすら、とうに忘れ
ただ呼ばれ、ただ駈けった記憶の熱さえもが
微かにすら吹かないままの風に奪われ続けるのだ

捨てられた背景は知らぬ誰ぞのものでしかなく
あの背景を捨てるという選択は
正しく犬が犬であるために必要だったが
名が描かれ、涙が描かれ、全てが描かれていたのは
結局は背景だけでしかなかったのだった

不要な硝子カップが割れると
必ず、その硝子カップを必要とするものが見つかり
始めて割れたことに気付くように
背景を捨てた犬は必要なものを見出したが
それら全てを喪失することでしか
犬は、正しく犬であることが出来なかったのだ
2012-08-11 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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