冬の川辺に咲く花を愛した

捨てられた後に忘れられた橋を渡り
水のない川の畔に回り込んで岸辺の花を摘んでから
小波の音だけが響く虚しい流れに立ち入って
ごつごつとした岩に足を取られては
想わず苦笑する相手を求め、見上げた崖上には
捨てられた後に忘れられた廃墟だけが建っていた

忘れられるために廃棄を待つ記憶達は
私を捨てることのないままに忘れ去って
つまり廃棄権を放棄して、しかし振り返ることはなく
ただ私からしか見えない記憶達として在り続け
永遠に捨てられなかったことに復讐し続ける

もはや眠りしか残されていない川辺には
忘れられた名前の付いた花が無残に踏み荒らされていて
しかし男は踏み荒らしながら花の名前を呼び続け
応える術のないままの花は黙って散りながら
名前を痛みに変えて記憶し、痛みを名前としていた

初春以上初冬未満以外の季節
つまりは冬に咲く花は常にそのように踏み荒らされて
痛みだけを名前として記憶しながら
目の前に入り乱れる忘却と廃棄を見送っている

季節の最上位に位置するということは、そういうことで
冬、水の流れない川辺に咲く花を愛しても
その名前を記憶することは出来ないが
踏み荒らされた痛みを知ることだけは出来るし
あの記憶達すら、少しは振り返る素振りを見せるのだ
2012-08-18 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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