造花の消えた出窓の中で

ナイフの切り刻む鼓動が
相対の等間隔を保つようにテーブルに置かれ
テーブルを挟んで座る二人の沈黙は
絶対的な距離、つまり愛を無意味にし続け
断続する硝子カップの砕ける音が
泣きたくなるような響きで鼓膜に滑り込んで来る

私と明日を交互に想い出しながら
過去から遠ざかる記憶を未来に振り向けて
貴方は何処へも行かない選択の中にだけ留まり
揺らぎを止められない私だけが漂って
二人の距離は偽りに変わってゆく

残された問題が飼い犬のことだけになると
ようやく二人は別れ話をしていることに気付き
二人の間を行き来していた犬が別れを決めて
帰属することに意味を与えた

出窓に飾られた造花が穏やかな微風に吹かれると
そこに置き去りにされることが出来ないことに気付かれ
飾り主の行方に関わらず廃棄される

犬を抱くと出窓に足を掛け
しばらくは見慣れない風景に戸惑いつつ
始めて出遭う小川を黙って見ていたが
やがて軽くもがいて腕から飛び降り
振り返ることもなく去って行った

テーブルと、テーブルの上の錆びたナイフだけが
私と貴方とを隔てる全てとなった頃
薄れゆく鼓動を切り刻み損ねたナイフは
やはり危険物として廃棄すべきだったと気付いたが
ナイフは自ら錆びた刃を折っては捨て
ただのグリップとなってでも居残ろうとあがいていた
2012-08-21 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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