そして谷で夜が終わり

もう二度と涙を流さずに済む距離を探して
手を取り合う二人は向かい合い
互いに自分を映す瞳に出遭って涙を流し
偽りでない涙を指の腹で拭い
その指を子供のように舐めては
少ししょっぱいね、と恥ずかしげに伝え合った

夕暮れ空が向こうに見える橋の下で
流れを失って蛇行する川に足を洗われながら
肩を並べて夕陽を眺め、それぞれに涙を流し
少し苦いなと想いつつ黙ったままでいた

二人を追い、追い越して尚、山影は遠くへ
しすて夜が背後の空を染めゆき
見渡す限りの空を覆い尽くして谷に降る
頬を濡らしてゆく霧に連れられて夜は降る

頬を濡らして尚、気付かれない霧のように、夜は
読み方を忘れた辞書を詮無くめくるように、降り
見渡す周囲を隠して尚、気付かれないままに
頬という頬を濡らして、いつのまにか夜は降り注ぐ

もう互いを見失わずに済む二人には夜に気付く必要はなく
やがて夜も闇であることを止めて二人と並び
頬伝うしょっぱさに懐かしい気恥ずかしさを想い出しつつ
谷の静けさに優しさを託し、黙って夜のままに夜を終えた
2012-08-22 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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