深い夕暮れの橋を渡る

忘れることだけが歩みとなる橋の真ん中で
欄干に凭れながら忘れ得る全てを数え
注意深く丁寧に、一つ一つを忘れていった

それでも残ったものを集めると
とうに別れてしまった貴方の輪郭となり
川面に落ちた山影が模り嘲笑っては
小波に紛れ消して流れて行った

ただ、それだけのことだのに
川の流れを見ることに耐えられなくなった私は
橋を行き交う人達の談笑に向き直り
曖昧に微笑んで精一杯の復讐をした気になった

それでも尚、残る悔しさを忘れるために
忘れることだけが歩みとなる橋に正確な垂直線を描き
空を映しながら流れ続ける橋下の川を感じ
その感覚を頼り辿って下流側の欄干を目指した

橋を行き交う人達は皆、至極、忙しかったが
頼りない私の足取りは流されそうで流されず
遠い海が闇に染まるのに沿って見上げると
空に打ち込まれた星が散っていた

辿り着けない反対側の欄干に涙し続けていると
星達は丁寧に一粒一粒を拾い上げて自らの光とし
いつの間にか私は橋を渡り終えていて
橋を渡ろうとした理由を置いて家路に急いだ
2012-08-29 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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