無題

優しさの一つが哀しみとなって降り
打たれた湖面に円心状の波が放射すると
真円の湖岸を巡る足元には
止まったままだった秋風が吹き
辿っていた足跡が薄れてゆく

寄せる波は一点に
再び三度、哀しみとなる優しさに
慕情を連れ戻っては泡沫に消え
止まっていた歩みも
二歩、三歩は進むのだけれど

ようやく想い出す明日が夕暮れを呼ぶと
優しさだけとなった面影は夕雲に潜り込み
温かな驟雨となって
優しさの全てを奏でる雨音を響かせる

だのに傘もなく雨に打たれては
捨てられた哀しみを拾い集め
もう来るはずのない昨日に注いで
幾度も通り過ぎたはずの
湖岸からの上がり口を過ぎてしまう

壊れた懐中時計だけは正確に時を刻み
得る前に失った全てを数えては
忍び込んだ雨水に静かに錆付きながら
永遠の終わりに向かう微かな秒針音を
心音に忍び込ませる

いつか斃れて仰ぎ見た空は暮れていて
想い出す何もないままに、いやに山際が紅く
暗い紺色の闇を厚い雲が通り過ぎ
その合間、合間に浮かぶ名も知らぬ星は
優し過ぎる淡さで光り、消えてゆくのだった
2012-08-14 17:09 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

For Admin

落書内検索

月毎落書

一言お報せ

リンクは勝手に頂戴、削除してます
ご迷惑な場合は、ご一報下さい



メール・チェックは非常に稀です


BlogPeople

出現するかもエリア-転記候補