川は流れ始めた

流れるままに凍った川から
ようよう抜け出た瀬音達が
風を受けて海へと転がってゆく

汽水域では凍ることを忘れた波が
揺蕩うままに波音も忘れられたままで
瀬音は微かな記憶を頼りに代わるのだ

サラサラサラと変わった音に
橋上の夕暮れは首を傾げながらも
あまりの寒さに考えまでも凍らせて
身まで凍らぬうちにとばかりに
山向こうへと去って行った

泣くじゃないよと三日月は言うが
鼻まで雲のマフラーを被ったままで
モゴモゴ、フガフガと要領を得ない
やはりその内、山向こうへと去って行った

やがて馬追う勢子の声だ
田の上、田の下、どじょっこ探しつ
ひゃっこさあ、街に追えば
そろそろ瀬音もしそうなもんだ
そう呟いて、山向こうへと去って行った

流れるままに融け出した川からは
もう瀬音がすることはなく
風とも波音とも聞こえる音が
ヒューヒューと吹き抜けては
山向こうへと去り続けるのだった

瀬音達も少し考えて川を遡る鮭を見倣い
山向こうへと去って行った
独り残された川だけは
音もなく、せいせいとして
サラサラサラと、流れ始めたのだった
2012-12-16 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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