ただの街に戻る手紙

少しづつ壊れ、少しづつ欠けてゆく日常を纏って
引いてゆく波に乾く砂浜の、光る砂の中に横たわり
遠くなる波音を聴いていると塩と哀しみが噴き出し
身体を動かすことが出来なくなった

防波堤の上を犬を追い掛けながら散歩する人の影が伸び
陽を隠して私は消え、そのままでいられたら
そう想う間もなく、また強い陽射しに焼かれるのだけれど

幾度も岬を周回し続ける一羽、二羽かもしれない鳶は
獲物を見つけることも戻る巣もないのだろうか
もう忘れる程の永い時間を共にしている

小魚の魚影を追いながら黒い川沿いを歩き続け
擦れ違う人は、その時、その時で違ってはいたけれど
同じ話しかしないままに、海にまで出てしまった

記憶では、常に雨雲が漂っていたからだろう
戻るはずの街を想い出すと空が雲だらけに見える
もっとも、そんな記憶があるほどいたわけでもないが
いつも雲を見ていただけなのかも知れない

書き残した一行を想い付かない時は
机の前に座っていても仕方ないだろう
だから街を抜けて、街でないどこかに行くしか

それだのに、皮肉なもので
街に戻らないと書く気にすらならないのだ
忘れなければいけない、あの人への手紙を

そろそろ雲から降るはずの雨が止んだままだ
海風の音だけが激しく木霊し始めているが
もう、あの人への手紙のことは忘れよう
書き終えたとしても届く宛も知らないのだから

もう書き終えたものとして海を外れ
ただの街に戻って温かいスープを啜ろう
2013-02-22 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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