犬死作法

十年来飼っていた犬がいた
飼っていたというより同居に近い
老年期は膀胱炎だったのではないか、
と今になって想うのだけれど
ある夕暮れの中、一人、静かに死んでいた
その前、数日は小屋から出てきても、
頭を撫でられると静かに小屋に戻って丸くなる
小食になって、痩せていった
彼女と遠出する日の朝だったと想う
いつものように小屋前に立つと、
緩慢な動作でヨロリと出てきた
 ああ、死んじゃうんだな
と想いながら頭を撫でると、小屋に戻る
 行って来るからな
と声を掛けながら
 待ってろよ
と想いつつ、出掛け、戻ると
やはり死んでいた
痩せたとはいえ中型犬は重い
たまたま来ていた妹の彼が弔い前の仮箱に入れておいてくれた
死んだ彼は「伏せ」の格好をしていた
死んでいるのを発見したのは母だったが、
いつも、そうしていたように、
独りきりの我が家を背に、頭を挙げた伏せ姿勢のまま死んでいたという
大好きなヤツだった
死ぬ前に、そうしてヤツは何をしていたのだろう、と想う
永年、一緒だった家族の帰りを待っていたのか
それとも無人の我が家の守り犬としての矜持ゆえだったのか
それは知りようもないことなのだけれど、
彼の凛とした死顔は、今でもハッキリと覚えている
2006-08-11 15:43 : 消去一葉 : コメント : 2 : トラックバック : 0 :
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おじゃまします。
いい話でした。
なんか吸い込まれるみたいにして、読んでしまいました。
犬としての、誇り、みたいなものを、感じました。
2006-08-12 01:40 : itu:kairou URL : 編集
いらっしゃいませ~
回廊さん、こんばんは(^^)

回廊さんの記事を読んで想い出した話で、ヤツの名前、「タロー」だったんです。
近所でも可愛がられて、普段は住宅街なのに放し飼いに近くて、近隣の番犬でした(笑)。
その後、犬を飼う話は何度か出たのですが、雑種ながらタロー以上の犬は、そうそうは・・・というのが中々に飼うに至らない家族の本音です。
2006-08-12 02:27 : まっく URL : 編集
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拝啓




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