鳴らない呼鈴

薄靄だが明るさに満ちた昼日中を
一瞬間だけ横切る夜の名残としての闇
それが昨夜なのかは分からない
そんな夜自体、訪れたことなどないのかもしれない
ただ音のない雷鳴が、細く音を引いている

もう雨からは相当、遠くに離れただろう
窓硝子に触れると滴が指に移り
てんとう虫の後を追って幾度も硝子を叩く

記憶の中でだけ流れ続ける小川の音
その辺は、あまりに殺伐としていて
わずかな草が疎らに生えているだけなのだが
記憶の中ですら見えないままの影が行き来している

本当は力強いのだろうけれど
春になろうとする梢は寂しく
季節を無視して青い空のせいだろうか
軽く触れただけでも、きっと折れてしまう
その音が耳朶を打ち響いて止まない

ピアノの音は少しは乾きから解放されたようで
数戸の屋根を越え、ここにも聴こえてくるが
いつもと変わることはなく
やはり聴いたことのないメロディーだ

呼鈴が鳴る前に手にした受話器と
相手もいないのに話そうとしていたことと
その間で立ち尽くしたまま
涙が流れ、全てを洗い流してくれるのを待っていた
2013-04-30 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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