季節たちの遺児

愛しい犬よ、今日は寒いか
そんなにストーブ近くに居座って
桜も散ろうかという、この今
なぜにこうも寒いのだろうかね
曇天の春は、そういうものだと知ってはいるが
春の曇天は、そういうものだと決まってはいるが
それでも、やはり寒過ぎるね

路面を滑る人影は凍る間もなく過ぎるのに
私達ときたらストーブ前を去る、その瞬間にすら凍ってしまいそうだ
これほどの寒さは外から来ることはないだろう
寒さを生むものは、外界には存在出来ないのだ
ただ私達の中に、どこか遠くに潜む冷たさが流れ出すとき
この世界はこんなにも冷たくて
何故、凍ってしまわないのかと不思議に思うほど寒いのだ

真夏の陽差しを想い出してご覧
少しでも避ければ涼しくなろうかという、あの陽射しを
あの下でも同じように私達は凍えていた
静かに潮増してゆく海の遺児として
耳中でうねる波音に揺られながら、さながら氷山のようだ
夏が暑い、熱いほど私達は凍ることを求めていた

春や秋は少しは安らげただろう
私は寒くもなく、暑くもないはずの二つの季節を覚えているはずだ
それらは夏に追われ、冬に締め出され呻いていたが
私達の周りに憩いの場を見出して舞っていた
季節が通り過ぎることを哀しんで舞っていた

しかし、その春も秋も私達を裏切ることなく見捨てた
冬や夏や、それらを待つ全てに押し出され
遠く水平線を北に南に越えるため
私達の周囲からもがれ、引き剥がされながら見捨てていった
いつだって私達は季節の遺児として、こうして凍えるばかりなのだ
2013-05-17 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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