月のない砂漠

その時、確かに私は彼女と手を取り合い、
そう、人ごみの中を歩いていたはずだった
あの映画館に行くために、その映画を二人で見るために
突然の一陣の風がいけなかった
彼女の手を離して袂で目を覆った瞬間、私はここにいた
荒涼とも言えない、果て無い砂漠の中に
あれから幾日幾夜を彷徨ったのだろう
昼になると炎に頭から焦がされ、
私は衣服を被って小さくしゃがみ震えていた
夜になると冷たい砂に身を任せ、
北斗七星を目を皿にして探したが見つからない
時に遠くに過ぎる人影も、とても声が届きそうにないままに消えていった
朝と夕、少しだけ、ほんの少しだけ私は歩くことが出来た
二度ほど通り過ぎた雨で喉を潤すことが出来たが、
砂は水を知らぬかのように吸い込んで元に戻った
私の足跡も、砂に吸い込まれて、もう見えない
前に歩いているのかさえ、もう見えない
絶え絶えの吐息の先に、一際に高い砂丘が見える
果てるなら高いところがいい、と聞いたことがある
もはや泪も涸れきった目には砂も空も一色に見える
唐突に足場が崩れ、私は、このまま落ちることを知った
永遠に身の汗も血も砂に吸われながら、落ち続けるのだと想った
ドボン、と派手な音を耳にした途端、息が出来なくなった
必死でもがき、想えば、そこは小池の中だったのだけれど
ようやくに顔を出すと君はそこにいた
あの砂漠が嘘のように消え、遠くまで濃い緑でぼやける中、
木陰で君は、静かにワンピースの裾をひらめかせ
私をじっと見つめていた
その瞳は冷たく凍るように光っていたけれど、
それでいいんだ、と私は想った
君の唇にキスをすると、涸れた泪が溢れ出た
君が、顔に流れ込んできた泪の一つを
舌で掬い舐めたのを少し傾いで見つめながら、
やはり、それでいいんだ、と私は想った
君の柔らかい舌が、悪戯っぽく、私の口に侵入してきていた



雪女のキスは凍るそうです!丈さんの運命やいかに?!
2006-08-13 10:57 : 消去一葉 : コメント : 6 : トラックバック : 0 :
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非公開コメント

こころの在りよう、脱線?しっぱなし、です。
 ダハハハ、雪女?なんて、確かにそう、かもしれない(猛爆)、されど、僕はこの運命を信じてやみません。普段の丈なら、こう、お答え致すはず。「雪女?ならば俺が雪男になれば良い。そうすれば、凍ることなんてないでしょ?」。風さん曰く、僕は「文筆界の稀代のトリックスター」・・・まさに変幻自在のこの頃でありますれば。さあ、ただし、この僕がそんな本来の今、本当に、精神状態であるのか・・・ないのか?、かなり高揚していることは事実でしょうね(爆)。      丈
2006-08-13 11:31 : 丈 URL : 編集
凍るのも、また良し、かと(笑)
丈さん、こんにちは(^^)
雪男は凍らないように毛むくじゃらなのですよ(爆)。
いえいえ、凍るのも一興じゃないですか?
さて私事ではございますが、15日まで雪女の国にいってまいります(笑)。
さすれば、暫しのお別れで御座いますが、戻りました際には、また遊んでやって下さいませm(_ _)m
2006-08-13 11:37 : まっく URL : 編集
ごゆるりと。
お気をつけて。我が古里は連日の35℃超過。なるほど、これでは「雪女」もとろけるはずです(爆)。消え入ってしまうのは困るので、僕がふうふう言いながら、仰いでやってます(汗)。良きお盆を。丈
2006-08-13 12:08 : 丈 URL : 編集
初めまして
itu;kairouさんのところからきました。いつもコメントのやり取りを見ていて
気になっていたのでご訪問させていただいた次第です。
詩を書くようになって半年足らず、しとはなんぞやというものを
見せていただいた気がします。
ありがとうございました。
時々ご訪問させていただきます。
2006-08-15 13:21 : ajisai URL : 編集
雪男は避難しました(笑)
丈さん、こんにちは(^^)
いやぁ、アチラも暑い、暑い・・・(==; さすがに夜風は東北のそれでしたが、空気が澄んでいるせいか、生の陽光はより強い気がしました。
そうですよね、お盆、なんですね。墓参りに行くと、色々なことが胸を去来します。
2006-08-15 17:08 : まっく URL : 編集
初めまして♪
ajisaiさん、こんにちは(^^)
回廊さんのところで、コメント、拝見させて頂いてます。
過分な御言葉、恐縮です。私の書いているものなぞは詩などと言えるのかどうか・・・(滝汗)なにかしら、お心に残れば過ぎたる光栄です。
また気軽に御越し下さいm(_ _)m
2006-08-15 17:12 : まっく URL : 編集
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