波打際に、にわか雨が降る日

届かないことを忘れてしまう遠さの先にある波打際
ようやくでも波音が響けば歩き出すであろうか
 線路は、やはり赤く照っている
鈍色の雲が広がる空の下で灼熱を保つ千年の古木
その葉の色は誰かのものであったことがあるだろうか
 千キロを歩き通した速さで風が吹く
 千光年を貫き通した速さで星が砕ける
接地面を持たないタイヤが軋み、その音で目覚めるか
知らない顔だけを覚えている街は、いつも雨が通り過ぎる(その雨も知らない雨だった)
問う人は留まるな、歩き続けよ
消えるはずの痕跡を追う人は歩くな、留まれ
ここに街を創るのだ、痕跡の残り続ける街を(罪深い)
 微かに波音が聴こえるが気のせいである
ページをめくると、そこで一冊の本は終わり、死ぬ
最初のページ・・・最初の一文字だけが永遠の最期を謳歌するのだ(一文字?)
見えるのは男も女も分かりやしない脳天ばかりだ
ようやく子供か大人かが分かるかもしれぬばかりだ
ああ、そこ行く禿頭の光は恵みの光かも知れぬ(笑ってはいけない)
 曇り空が海を渡ってゆく
 また置いて行かれるのだ、貴方も、私も
聖の残したという書物を持っているかと尋ねられたら
誰もがそうするように隣の人に訊く(永遠の円環は創られない)
私は隣の人を持たぬようにしよう(実際、おらぬのだ)
白紙を手に、それらしく振舞って渡せば良い
それよりも波打際である
誰も彼もが忘れてしまった波打際
 波音がしない波打際なんて、あって良いものか?
遠くから、近くから風は吹き始め
雨の降り始めは誰にも知られることがない
泣くような声で愛を謳う女を愛する男はいない
 阿呆な男は泣くような声で愛を謳い
 利口な男は笑うような声で愛をこき下ろすものだ
夜の海の静けさの中で波打際に雨が降り始める
月も星もない夜の海、その波打ち際でだけ降り始める
通り雨は過去と過去との間をすり抜けながら
賑やかな小雨となって私達の肩を叩いて去って行く
にわか雨の季節が到来したのだ
2013-06-19 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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