不能

哀しみに変えた椅子に座る初老の男と少女の間で詩は吹く
邪まで淫らな詩が、吹き抜ける
すり抜けた手を見つめる男は持てる道具などないのだ
少女の手には燦々と輝くノートが一冊あれば十分だというのに
彼らが語るものといえば恋に関わることなら何でもよい
(なんなら愛でも良いのだ)
男は嘘しか吐かぬ、吐けぬのだ
一頻り語り終えたなら、直ぐにでも小屋を飛び出して雪に塗れ
死について一人ごちたいのが本音なのだが、彼の矜持が許さぬだけだ
 雪は激しい音と共に降る
その不能を死として語るしか彼は想い付かぬ
瑞々しさに涸れ果てさせられた一絞り、それが彼の声か
 鮮やかな波音は若い彼を抱いて、ついに離さすことがなかった
-死を恐れているのなら、どんなにか良かろう-
彼は想う、死に押し付けようとする全てを
少女の未熟な妖艶さに籠められた全てを
 独りでは死ねないとは残酷なことだろうか?
私は彼らを放っておいて星を見上げよう
月も良い、雲も良い、太陽でも、鳥でも、飛行機でも(つまり何でも良い)
私の不能は私だけのものだ
誰に預ける必要もなければ渡す必要もない
 誰しもが本来、その不能を我が物とすることが出来る
ふむ・・・そうだな、そうだ
私は、この不能を愛する
何もなしえなかった今まで同様、愛しいのだ
-不能の中に愛を見出す邪まさは赦し難い罪だ-
ただ不能であることだけが全てであったことに気付き
死の不能に晒され続けていることに気付き
全ての不能を誰に預けることなく独り椅子を寄せよう
冷たいまま燃える暖炉の前で
愛しさは暖かさを増し、私の全てを蕩けさせてしまうではないか!
2013-06-21 00:00 : 想葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

拝啓




Author mak From "空白"

想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
渓谷0年(オンライン版)
Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

For Admin

落書内検索

月毎落書

一言お報せ

リンクは勝手に頂戴、削除してます
ご迷惑な場合は、ご一報下さい



メール・チェックは非常に稀です


BlogPeople

出現するかもエリア-転記候補