夜の声に置き忘れられた涙のように

声音を失った夜になって歩道橋を渡ると
あなたは夢のように消えながら、
テールランプだけで走る猫のような貝殻になった
追いかけるだけで消える、それがすべてのように

愛していると告げる場所には消去された跡がない
その恐怖に足止められた時間たちだけが吹きだまると
遠くより遠くで近さを図るように近い
なんども繰りかえし流れている歌なんて、
けっして覚えられないように覚えていない

-雨の美しさを語るなら、
 あの横丁で血を吐きながら倒れている男を見てからだ

飲めもしないお酒ばかりが光を浴びている
光を戻しながら太陽を作り、
太陽を作りながら月を消していった
夜が始まるには…
そう書き始めながら夜を聞いていた

終わらないの、そう、終わらないで-
ささやくだけで女になる
街は女だらけで景色を失い、季節を失い
夜を探して彷徨う蜃気楼になる
2018-02-10 00:00 : Zero Areas Ⅱ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

もうひとつの「津軽平野」

「津軽平野」は吉幾三の作詞・作曲の歌だ。
意外なことに、この曲、発売されたのは「俺ら東京さ行ぐだ」と同じ1986年というから面白い。
参考)
第5回インタビュー 吉幾三「津軽平野」「雪國」

さて、この曲、普通に読める歌詞なのだが、ここで、もうひとつの読み方を提示してみたい…というのは嘘で、実は、「そう読んでました」という話だ(苦笑)。
まあ真面目な話をすれば、これはこれで非常に深刻な内容を「含んではいるのだが…
参考)
大人の歌ネット:インタビュー「吉 幾三」 - 歌ネット

津軽平野 吉幾三

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2017-12-31 23:59 : 消去一葉 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

庭師の一日

…猫の狼みたいだな」
なんてほどの冷たい距離ですら、
生垣も機能しなくなるだろうにねぇ-

青い夕暮れには冷蔵庫が似合うね
すこし古い時代の冷蔵庫がよく似合う
きみの歌が聞こえてきそうなほど似合う

嘆きの娘は坂道を転がるのが大好きで
走りさろうとする犬ばかりを追いかけていた
それでもみそ汁のにおいからは逃げられないんだ

みそ汁が流れていたころの川を
古すぎる川を忘れたくて
朝から酔いつぶれて男に抱かれもして
それでも忘れられやしない

「だからぁ、都会だなんていったって、
 田舎もんしかいないんだから…」

湖に沈む時間を想いだしながら
あらゆる娘たちの時が凍るように季節が終わり
旧家のプライドが溶けてゆくのを嘲笑うように
もう一度、生垣を仕立てなおして庭師の一日は終わる
2017-12-16 00:00 : Zero Areas Ⅱ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

季節する愛

いつも冬の暖かな坂道は、どこか夏の夕暮れの痛みに似ていた。
季節のない国にも、やはり冬も夏もなくてはならなくて、
別に季節なんて要らないだろうというひとびとには知られないでいた。
彼らは自らを自らから遠ざけるひとたちだったから、
関係ないといえば関係ないのだろう。

いつも想いだす<改行>の意味を遠ざけながら、
幾度も無意味であるはずの改行を繰り返している。
その、あまりにも大きな欠如から目をそむけるように、
私は改行を繰りかえすしかなくて、それは…
それは、とてもかなしいことなのだけれど、
どう伝えたら良いのか、私にはわからない。

今日の話は、確か<痛み>から始まったと想うけれど、
そんなことに意味があるはず、ないだろう?
濁った空には、いつだって無数の季節が散りばめられ、
私たちの痛みを共有するかのように知らぬ顔で暮れてゆくだけだ。
君は、いつも荒波をかなしんでいるけれど、
それだって、空を見あげながらだった。

空は、あまりにも季節に似すぎてしまい、
季節は空に似すぎてしまった、
そういうことではないかと想う改行が、
無数に繰りかえされるように波打つ砂浜で、
あまりにも、きみが愛しい。
それは、ただの季節のせいで、きみが愛しい。
2017-12-09 00:00 : Zero Areas Ⅱ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

遠く、別れるまでの遠く

「まるで井戸のような雨だわ」
そう言い放った唇の冷たさで、その日も君の雨は降って、夜半には止んだ。

できれば私たちが固有だなどと勝手に想いこんでいるそれ(意識と呼ぼうか)が消え、
昼と夜との区別がないようにと祈ろう。

今日の六(十八)時半には、すべてが終わるように仕込んでおいた。
そんな火山の麓で私たちは逢瀬を重ね続けている。
まあ、いずれ海も山も消えることだろう、そのようなものでしかない。

そうして今日も、遠さについてだけ語る波音が小島を一周する間に、君の帰宅時間は終わる。
明日の出勤時間には、君は、もう一度だけ、今日の帰宅時間を振り返るのだが、
それについては君も、もちろん私も触れはしない。

まず、それに触れるには井戸のような雨、それについて語らねばならぬから。
私は君に それを問う気はないのだったし、君も答えなど求めてはいなかったのだったし。
それだけで私たちは十分に別れることが出来た、そうだろう?と木々は応える。

季節のように岩肌が焼けている。
雨一粒が遠ざかるスピードで焼けた岩肌に寄りそいながら二人で、
私たちは、二人という季節を探しながら滅んでいく。

井戸の底に今も降る、あの雨のように。
そう、だれもが知る、あの雨のように…

私たち固有の問題については、それはいずれ、
語る時が来るだろうし、来ないだろう。
私たちは、それを知る必要がないし、知ろうともしないだろう。

さあ、もう一度、訪れる六(十八)時半のように、
私たちは私たちを終えてしまわねばならないね。
さようなら、また、いつか。
2017-12-08 00:00 : Zero Areas Ⅱ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

非在という出会い方について

川ぞいに歩く。
泣きながら、涙に似た石を拾いながら。
わたしには、もう涙がないから、と。
ポツリ、ポツリ…と雨が降るように風を追う。

街から街へと行きわたれば陽炎のような陽炎と出会う。
わたしには、もう言葉がないから、と。
それでも川ぞいに歩く。
川に似た川を、遠くから歩く。

ベンチに似たボロ犬が坂道を転げるように、
笑いながら乳母車に潜りこんだが、
私には乳母車が見えなかった。

朝だっただろうか、その時は?
いや、朝だろう、朝に似た、朝だろう。
いつか見た記憶のある、朝だっただろう。

川には、もう流れがない。
淀みににた水は澄んでいるのだろうか、
凍った魚影だけがキラキラと光っている。
光を遠ざけながら光っている。

川ぞいでは、きみに会えない。
あまりに近すぎて、もう、わたしたちはきみに会えない。
そう、なんども呟いた川の縁に、
ほんのかすかな笑顔を置いて、雨が降る。
もう、わたしたちには、きみとの出会いがない。
2017-12-05 00:00 : Zero Areas Ⅱ/0 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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拝啓




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想一葉、兼訪問帳

星々の冷却(書肆侃侃房)
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Both by mさん

【 無意味という意味 】
すこしの風を追いかけて
【 短文 】
大海にも降る一滴
2015.07.17.

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